Workers K&T H MFG Co "SUPER BIG CAT Jacket, 10 oz Denim"
元ネタはSuper PAYDAYのレイルロードジャケット。
オリジナルはボタン、ラベルなどに8オンス・サンフォライズドジュランク表記。
「PAYDAY」商標登録が1922 年。サンフォード・クルエットがサンフォライズド(防縮加工)関係の特許を取得したのが1930年代初頭。これらの前提から、1930 年代半ば〜後半にかけての一枚ではないかと推測出来る一枚です。
我ながら、よくできたのがパターン。フロント前中心が上端が脇に倒れる。それを無理やりボタンで合わせるので胸まわりに皺が出る。胸まわりの立体感を出すパターン操作ですが、立体感をダーツで処理していないので独特なシワが出ます。 おそらく、1900 年代初頭にメジャーだった製図法の名残ではないでしょうか。ボタンやデザインが派手なので見落とされがちですが、古いジャケットの「らしさ」はこの独特な形にあると思います。
仕様、袖口表カフス。パーツ同士の縫い合わせはトリプルステッチ。フロント・袖口でサイズ違いの刻印入りボタン、台 襟付き、コンビネーションポケット。
レイルロードジャケットでも最も豪華かつ派手。デザイン・仕様が行きつくところまで行った感のある時代。
素材は10 オンスクラスのデニム、ホワイトデニム。悩んだのが元ネタの「8 oz」の8モチーフをどうやっ て落とし込むか。当初、10oz でデザインしてみましたが、どうしても8を入れたい。そこで思い出した、我が家の猫たち。 我が家には8 匹の大きな猫がゴロゴロしています。
製品はOW済です。
SUPER PAYDAYのカバーオールを今回は「リプロ」しています。パターンは出来る限り忠実に。
カバーオールというと、ボタンやラベルの派手さに目が行きますが私が古着と現代の服で一番違うなと感じるのが形・フォルム、つまりパターンです。
前端が湾曲している。上に向かっては肩方向に倒れ、ボタン位置は一部しか打ち合わせが合っていない。無理やり全部ボタンを閉めれば胸当たりにシワが寄る。
フロントの上二つは位置関係が合っていないので無理やり締めることになり、第一ボタン横に皺が寄ります。
これをあえて上一つがけすると裾に向かってAラインができる。なぜこのようなパターンなのかは所説あります。私自身は、古いテーラードの製図法がワークウェアにすらいまだ残っていたためこう「なっちゃった」だと思います。のちに「別にこの曲線いらないな」「フロントはまっすぐの方がボタン位置も合うし楽だな」と変わっていき、直線的なパターンになっていったのだと考えています。
何故このパターンか、このパターンの意味。それらは推測の域を出ないのですが、結果出来上がった形がとても独特でカッコいいと感じる。私たちが、若かりしころ古い洋服を見て「独特でかっこいいな!」と感じた部分は生地・部品もさることながら、このパターンにも大きな要素があると私は考えています。なので、今回のカバーオールは一番にパターンを説明したかったのです。
台襟付きの襟。台襟は金具を使って縫います。この金具が以前作ったものは絶妙に細い。ちゃんと寸法指定して、生地も渡したのに・・・
金具をたたいたり、伸ばしたりして工夫しましたがどうしてもうまくいかず。結局、もう一度「この金具だと微妙に寸法が小さいから後1ミリ出して!」といった風にして新しい金具を作りました。
金具もさることながら縫ってくれた藤枝さんの腕も良い。右手に襟、左手に身頃で曲芸のように縫う部分なので難しいのです。かなり昔に、別工場のおばあちゃんに縫ってもらった時は、私が左手の代わりをして二人がかりで縫いました。懐かしい。
パトリオットカラーのラベル。カバーオールはやっぱりこういう「らしい」部品がつくと可愛いです。昔、古いカバーオール見るとなぜかブルーとレッド+ネーム本体の白系でデザインしたものが多い。しばらくして、デザインをしてる方から「パトリオットカラーですね」と教えてもらい、アメリカ国旗のあの色かと気付きました。
羽襟の襟回りは2本針ミシンで縫うので角に「チョウチョ」と俗に呼ぶ糸のワタリが出ます。このあたりはワークウェアならではの、生産性を考えて2回縫う所1回で縫おうとか、2回縫っておけば強度が出るだろうという工夫が結果としてデザインになっている部分。私がワークウェア見て縫製でムラムラ来るのがこのあたりです。
右胸にフラップ付きポケット。裏にはその右胸ポケットの周りを覆うように内ポケット。
今回新たに作ったボタン。さすが昔のものは量があったのでしょう、専用デザインかつボタンの大きさも胸・袖口・台襟とフロントは微妙に2ミリほど違う!
やるなら全力!という事で作りました。金型と版下代で22万は痛かった・・・ですが、やっぱり作ってよかった。
悩んだのがオリジナルに入っている8ozの文言。どう見ても8オンス以上ある生地なのですが8オンス。資料を無くしてしまったので証明できないのですが、アメリカで昔、オンスの呼称が変わった事があったようなのです。それは生地屋さんが告知していた紙で、確か、平方ヤードが生地幅なりヤードに変わるとかそんな話だったのです。さらに、キバタ(生)の状態の生地を洗うだけで10%近く生地は重くというか、分厚くなります。なので「8オンス」と銘打っていても、それ以上に現代の規格では厚い・重いと感じるのはよくある事。
そこで、今回のシリーズは10オンス生地を使う。でもボタンに8と入れたい。悩みに悩んで8、8、8、自分に何か関係ある数字・・・そこでひらめきました。2022年8月についに我が家は8匹に猫が増えました。これだ!と一気にデザインしたのが上のボタンです。
その噂の8番目。香川からきたシャムトラ女子、ハミちゃんです。生粋の野良、保護猫です。
他の7匹もご興味ある方はWORKERSカタログをご覧ください。
左胸のコンビネーションポケット。懐中時計+ペン差し。ぐるりと一筆書きで取り付けます。
あらかじめ、タテははいでしまいぐるりと2本針のミシンで取り付けます。
そのあらかじめタテハギの一部があいて懐中時計が入るポケット。
大型の腰ポケット。下の方には補強布が裏に貼られています。ポケットは縦方向に生地を使い、補強布は横方向。縮率の差がこの微妙な皺を生み出します。私はこういった立体感のあるシワが好きで、これぞ「ワークウェア」だと思います。
デザインは同じでも一回り大きいフロントボタン。オリジナルは量を作っていた時代なのでしょう。機能的には別に他と同じ大きさでも良いのにフロントにはわざわざ大きいボタンをつける。ボタンが大きければより強く、頑丈に見える。人から目に付くボタンに自社のロゴやブランド名を入れたり。それも単に入れるのではなく人の目を引くようなデザインをする。アメリカが「広告大国」と呼ばれる理由がこのあたりにあります。それを見た我々は「かっこいいなぁ!」と感じるのですが、これも私のような40代以上だけでしょうか?果たして今の若い人にこの感覚があるのか?私はあると信じています。
これも古いカバーオールの独特な仕様。「ガントレットカフス」などと呼ぶ人もいますが、単純に「表見返しのカフス始末」です。通常、裏に生地を持って行く袖口見返しを表に。さらに、生地の方向も袖と変えることで、ヒッコリーは特にド派手な印象です。
背中にネーム付けの糸がそのまま見えるのもワークウェアらしさ。最後はネームがはがれてこのステッチだけが残っている古着を見ると、それもまたかっこよく感じます。
素材 10オンス・コットン100%・インディゴデニム
附属 ライン24/ライン27 SUPER BIG CATボタン, 胸織ネーム, 背中プリントラベル
縫製 総綿糸
MADE IN JAPAN
38 身幅56.0cm 着丈76.0cm 裄丈(肩幅/2+袖丈)84.0cm
40 身幅60.0cm 着丈77.0cm 裄丈(肩幅/2+袖丈)85.0cm
Workers K&T H MFG Co.
岡山を拠点にし、主にアメリカ物ワークアイテムを紹介しているブランドです。
実際のアイテムを調べる事はもちろん、そのアイテムを作っていたメーカーや現存する建物にまで足を運び歴史を調べ上げてアイテムづくりのヒントにしています。
生地やパーツにこだわり抜いた商品ながら非常にコストパフォーマンスの高いアイテムが特徴です。