Workers K&T H MFG Co "French Cargo Pants, OD Kersey"
誰が呼んだか、M47 やフレンチカーゴだなどと呼ばれる6ポケットパンツ。今回、わかりやすいように「French Cargo Pantas」と品名を付けました。
私自身、フランスに行った事も無ければ、アメリカ軍物でいうQuatermaster Supply Catalog のような紙資料も見たことが無く、これがしかと何なのはわかりません。以前から 「作ってみたいな」 と思うも、 古着が安く出てくるのでやりませんでした。が、最近はそうでもなくなってきたので作ってみました。作ってみると・・・ 大変でした。
アメリカ物とは違う、合理性が無いようで、でもあるような手間&謎仕様のオンパレード。 シルエットはいくつか用意した実物の中から、中期?とか後期?とか言われる股上が深いけれど深すぎないものを。何本か履き比べてみると、明らかに股上が深すぎて、現代のファッションとしてはどうやって着たらよいかわからない個体も。でも、オリジナルを無視して、別のパンツにディテールだけ乗せ換えはしたくなかったので、実物解体からパターンを取りました。
フロント、身頃の切り替えを利用したポケット。(これがまた、見た目より面倒な作りで)尻につく当て布は、先に内またを縫ってからたたきつけで非常に縫いづらい!なんでこんなことをするのか? 実物を解体してみてわかりました。内またの生地が重なって分厚くなる部分、ここをちゃんと縫い代が隠れるように縫えていないのです。それを隠すために、わざわざ後から補強布を当てる。
サイドのポケットにはボタンが二重。サイド・後ろポケットにはボタンを隠すヒヨク。膝には当て布、裾はタブ&ボタン。ベルトループ上下流し込み。どこまでやるんだという凝った仕様のオンパレード。身頃の縫い合わせも、実物はチェーンステッチあり、シングルステッチありでしたがWORKERS版はチェーンステッチ。
素材、カルゼは綾織り生地でも特に目がはっきりと見えて固い手触り。8 オンス程度ですが、当て布あり、 ポケットあり、シルエットも極太で一着当たりの生地量が多くオンス以上にパンツの形になると重みを感じます。
参考にした実物は写真撮影後バラバラにしてパターンを取りました。パターンそのまま、ディ テールもほぼそのまま。ボタンだけこの解体個体ではなく、他の個体を参考に金属製。
フレンチの軍パン、やれ「マルジェラが裏返してコレクションで使った」とか、妙に伝説の多いパンツです。ただ、見つかる個体は生地・パターン・付属に色々な種類があります。ラベルもサイズらしきものが書いてあるだけで、アメリカ軍物のようなスペック・日付・コントラクトなどはほとんど見当たらなく正体は何も判然としません。正直、最近作られたものにラベルだけつけたのでは?という物も多々あります。そういう事もあり、WORKERS版はあえて、それらしい数字のネームはつけませんでした。
コーディネート、パンツにものすごい特徴があるので上はあっさりが良いのでは?白いシャツやFC Knit、RAF Cotton Sweater のようなカットソー。寒くなったらシャツの上にざっくりしたニット+ コート。ラフなんだけど、アメリカ軍物程どカジュアルじゃない、しゃれた軍パンです。
深めのまた上。でも、オーバーパンツのような深すぎではなく。
このパンツの特徴的なフロントポケット。切り替えしを利用してポケットを作っています。簡単そうに見えて・・・難しかったです。解体した現物見ながらでやっとパターンが作れました。
ボタンフライのフロント。ヒヨクは一か所だけ見返しと止まっている。
世の中、「本物っぽいラベルだけどリプロじゃないかな?」というものもかなり多いパンツなので、ネームは明らかにリプロとわかるものにしました。
膝の当て布。おそらくは単純に強度を上げる為。
マチ付き、ヒヨク付き、さらにボタンは二重!どこまでやれば気が済むんだ・・・という凝った仕様。またポケットが前のポケットにもなっている切り替えに近い。パターン作る時は四苦八苦しました。
玉縁+フラップポケット。ここもフラップ+ヒヨク。どうしても表にボタンは出したくなかったようです。
上下帯に流し込んだループ。ループを切って・折って・カンドメで止める「オートベルター」というミシンができる前はこんな風に、あの手この手でループを帯に仮止めしていました。でも、上下流し込みは帯の位置がずれるとループごとズレてしまうので難しい。普通に、身頃に止めて下だけ流し込みにすれば楽なのですが。
もしかすると、先に下だけ流し込んで表帯だけつけて、裏帯を後からつけたのかも?とにかく、普通じゃ考えられない縫い順をしてそうです。
スレキはカラーもの。後ろポケット周りはロック始末。
今回、一番???だった仕様が股下の当て布。わざわざ、すべてを縫い終わった後に当て布を載せています。
ほどいてみてわかったのが、内股の巻縫い。これが、参考にした見本は股下部分が全然巻ききれていない。厚みがある部分は表は折れているけれど、裏は折れていない。断ち切りがそのまま見えていました。それを隠すために当て布を最後に当てているわけです。
裾を絞るタブ&ボタン。これもつければつけるほどコストがかかって値段が高くなるのに・・・でも、当時の軍物?としては必要だったのでしょう。そう、軍物は「必要とされる機能」が優先。コストは後から。ある程度はコストも考えたのだろうなというサンプルなどもありますが、最終的には、機能てんこ盛りが多いですね。
素材 8オンス・コットン100%・カルゼ
附属 金属ボタン
縫製 スパン糸
MADE IN JAPAN
S ウエスト82.0cm 股上(前31.0cm,後38.0cm) レングス78.0cm ワタリ幅33.0cm スソ幅22.0cm
M ウエスト88.0cm 股上(前31.5cm,後38.7cm) レングス78.0cm ワタリ幅33.0cm スソ幅23.0cm
Workers K&T H MFG Co.
岡山を拠点にし、主にアメリカ物ワークアイテムを紹介しているブランドです。
実際のアイテムを調べる事はもちろん、そのアイテムを作っていたメーカーや現存する建物にまで足を運び歴史を調べ上げてアイテムづくりのヒントにしています。
生地やパーツにこだわり抜いた商品ながら非常にコストパフォーマンスの高いアイテムが特徴です。