Workers "Officer Trousers, Regular Fit, Type2, Black Chino"
おなじみ、古今様々なチノパンを混ぜて作るWorkers Officer Trousers。
Regular Fitの裾幅21センチ程。Slimの18センチと少しの差ですが、見た目にもわかるストレー トシルエット。
このシルエットで細玉縁の「普通のチノ」をそういえば作ったことが無かったなと気づいて形にしてみました。
脇はダブルステッチ巻き縫い、フロントポケット斜め切り替えで手が入れやすい角度。24 秋冬でも似たフィット感はあ りましたが、あちらは「別帯」というジーンズのように帯が別につくタイプに対し、今回は「身頃帯」とか「腰裏」と呼ばれる、身頃から帯がそのままつながっているタイプ。いわゆるチノパンはこちらが多い。
これも、今では普通に縫えるようになりましたが、型紙に縫いやすくするポイントがあります。ウェストベルト部分に絞りが入ると後が縫いづらい!パターンでの工夫は当然して、さらに工場さんにも
「ここのラインを消さないで!消したら、次工程で腰裏つけるとき、下側が寸法足りなくてタック取ってしまうから!」と現物を見ながら何回も説明してます。こういうことがあるから、近くの工場さんでないとWORKERSの製品は頼みづらいのです。
その甲斐あって今ではバッチリ縫えます。
脇の巻き縫いがポケットと交差するところも難しい。古着はよく見れば
「生地端がちゃんと縫い込めてな通称パンク」 もしばしば。
そこで、
「中に入って見えなくなる部分の生地を落とす」
「ポケットの入っていく角度をおさまりが良い角度にする」
「縫い代止めをぎりぎりまで押さえる」と工夫。
ボタンホール部分もビンテージは厚みがありすぎるので
「中の生地を落とす」
「落としただけだと、生地端がホール横で遊ぶので表には貫通しない隠しミシンを入れる」等々・・・ 思い出すと、「よく色々工夫したな」と思います。
付き合ってくれている工場さんに感謝。(途中で脱落した工場さんは残念)
製品はOW済です。
素材は定番の10オンスチノ。キバタ(ベースになる布)は岡山のご近所で織ってます。
作るところを見せてもらいました。苦労は「この素材で限界ぐらい密度が高いこと」だそうで、最初のうちは織傷が出て出て仕方なかったと。ただ、その規格を何回も繰り返すことで勘所をつかんだそうで今はバッチリ。本当に織傷が少ない良い生地です。

どこも窮屈でない、股上は浅すぎない。「ザ中庸」なシルエット。

コインポケットがサンプルはちょっと小さすぎました。縫い代がポケットに当たるので安全策を取ったら小さすぎました。機能性は正直あるような・ないようなですが、デザイン的にもう少し広くないと収まりが悪い。
量産ではもう1センチ程度巾が広くなります。

ヒヨク止めステッチ入り。これもクラシックなトラウザーズの仕様で、初めて古着のチノパンを見たとき「ステッチがあるのに、なんで表に見えないだ!!!!!」と頭が混乱したのが懐かしい。見返しだけに止めています。

ここはビンテージで見つけて真似するようになった、「小股」のダブルステッチ。チノパンはここにステッチ無しが多いのですが、何本も見ているうちに入ってるものも見つけました。入った方が強度的には絶対強い。でも、「原理主義」的に「古着でないんだから入れたら偽物だ!!!」ぐらいに若いときは思っていました。
が、入ってるのを見つけましたし、ミルスペックをよく読むと、「トラウザーズが得意な工場」でも「ワークウェアが得意な工場」でも、どちらでも作れるよう仕様にもある程度の柔軟性があるのがわかってきました。
そこで、小股部分のステッチを今は入れるようにしています。

斜め切り替えポケット。角度がついているので手が入れやすい。弱点はコインポケットの入る場所が非常に狭い。パターン、特に小さいサイズを作るときは毎回四苦八苦します。

もともと
「ARMY OFFICER'S TROUSERS」のネームを見て、それを真似て作りました。Search Lightさんに朝から並んで買いに行ったオリジナル。仕様が普通のチノパンとは違って手に入って嬉しかった。そんな事を思い出すネームです。

ダーツが半身二本。絞りが分散されているのでヒップの丸みがとてもきれいに出ています。
人間の体はヒップ~ウェストにかけて、タテに大した距離は無いのにものすごくグルリの寸法が変化します。ここをどうやって処理するか・・・がパンツの勘所。
ジーンズはダーツは使わないで「シュリンクトゥフィット」で解決していました。シュリンクトゥフィットが無くなってからは正直、ジーンズはダーツの無い型紙だと独特の窮屈さがありました。ダーツ分量をヨークに振り分ける方法もあり、自分でも形にしてみましたが、それはそれで「クラシックなジーンズらしさ」からはかけ離れる。
今では、ストレッチ生地があるのでダーツ分量が無いジーンズでもある程度楽に、着心地よくはけるようになっています。
軍パンは、ダーツがあるものもありますが無いもの、例えばベーカーなどはウェストを大きめに作って調整ボタンで閉めることでダーツの代わりにしたり。調整バックルも同じ考え方です。
股上を深くして対応しているものもあります。ウェストに対してワタリを出す。このヨコ方向に思いっきり出した分、股上が深くなっている・・・という考え方です。
で、今回のチノパンはダーツ、それも複数本使って分散させてヒップの丸みを出しています。
トラウザーズでフロントにタックがある、あれもヒップ周りの横方向を出してゆとりを持たせ、体が動いた時に突っ張らない。
とこのように、調整ボタン、バックル、タック、ダーツ。色々な方法はありますが、どれも人間の体の「デコボコ」を処理しつつ、体が動いた時に突っ張らないよう、必要なゆとりを出そうという考えのもとに工夫されてきた痕跡です。

後ろ中心ループオフセット。厚みがあるのでカンドメがうまく打てなかった時代に考えられた仕様。今では打つこともできますが、私はあまり厚みがある仕様はそこが当たって着心地が悪くなるので、薄くなるオフセット仕様を採用。

細い玉縁に左身頃側ボタン。
Greigeはあえて配色のカンヌキ+ボタンにしてみました。古いオーダー物のコートで「なんでこんな変わった色でカンドメとホール?」というものを見たことがあり。それはそれで、独特な立体感というか、可愛さがあったので真似てみました。

これがダブルニードル。裏はチェーンステッチ。
ダブルニードルのチェーンではない、いわゆる「平ミシン」の縫い目形状のミシンもあります。カバーオールのポケット付けなどでよく使われます。
が、二枚の布をはぎ合わせる工程はこのチェーンステッチのダブルニードル。ミシンの形状が筒状を縫いやすくなっていること。
内またのような長い距離を縫う時に糸が無くなってステッチが途切れるのを防ぐため、下糸をボビンという小さい金属に巻く必要が無いチェーンステッチ。糸は、数千メートル分、管に巻いた状態でそのまま使えます。
素材 10.5オンス・コットン100%・チノクロス
附属 樹脂ボタン
縫製 主要部綿糸
MADE IN JAPAN
30 ウエスト77.0㎝ 股上(前29.0cm,後40.1cm) レングス78.0cm ワタリ幅31.5cm スソ幅20.5cm
32 ウエスト82.0㎝ 股上(前29.5cm,後40.5cm) レングス78.0cm ワタリ幅32.5cm スソ幅21.0cm
34 ウエスト87.0㎝ 股上(前30.1cm,後41.2cm) レングス78.0cm ワタリ幅34.0cm スソ幅21.5cm
36 ウエスト92.0㎝ 股上(前30.6cm, 後42.0cm) レングス78.0cm ワタリ幅35.5cm スソ幅22.0cm
Workers K&T H MFG Co.
岡山を拠点にし、主にアメリカ物ワークアイテムを紹介しているブランドです。
実際のアイテムを調べる事はもちろん、そのアイテムを作っていたメーカーや現存する建物にまで足を運び歴史を調べ上げてアイテムづくりのヒントにしています。
生地やパーツにこだわり抜いた商品ながら非常にコストパフォーマンスの高いアイテムが特徴です。