Workers K&T H MFG Co "L-2B Mod, 66 NYLON TWILL"
秋・冬、まだ肌寒い春先にかけて。つい手に取るのがアウトドアブランドが作る「ちょっと暖かいソフトシェル」。
さすがにそればかり着ていると「おいおい、自分は洋服屋だろう?」と自分で突っ込みます。出張は、ジャケットやコートを着ますが、「日々羽織る」となると、軽くて、ちょっと暖かくて、丈も長すぎない。袖口や裾が適度にすぼまっているア ウトドアウェアは楽。そういう要素を持った服を考えていて「そうだ、L-2 B があるじゃないか!」と思い出しました。
当然、昔着たマッコイズはとうに着られるサイズじゃない。現行品もいくつか買ってみましたが、すっきりしすぎて動 きづらい!今の感覚とも違う。そこで、「昔はオリジナル高くて買えなかったよな」と思いながら検索すると、おお! XL なら安いではないか!という事で、オリジナルを買ってしばらく着ていました。ゆったりして、リブも締 まりすぎない。とにかく着ていて楽。ただ、裏地が縮みで吊り上がり形崩れ。リブが虫食い&チクチクする。ウールが入っている部品があるので、冬が終わって春先に着られる時期が短い。
このウールが、形崩れ・虫食い・チクチク・着る時期を選ぶ原因だ!と考え、WORKERS では一切ウール無しで形にしました。
表地は66 ナイロンをオリジナルの「おそらく変色していないだろう」パッチがついていた下を基準に染める。最初、染めビーカーが来た時には「もう少し緑じゃないか?」と思いましたが、「変色が少ないパッチ下に合わせてます」と染色 工場さんから指摘がありました。この辺りは、やっぱりプロです。
裏地も、ウールレーヨンではなく、コットンレーヨンのサテン生地に変更。これもやはり別注で染めないと色が無い。Tops Apparelの個体を参考に色だし。オリジナルは、裏地の裏(服の中)、隠れる部分が起毛しています。おそらく、この中起毛は薄い中ワタを入れるのと同じで保温性を高める為。この起毛も再現してみようと、起毛サンプルを作りましたがコッ トンなので毛足がどうしても出ない。厚みもでない。そもそも、春先まで着られるよう保温性はそれほど高く無くて良い。当然、起毛しない分、ほんのわずかでもコスト・定価が下げられる。以上から、合理的に判断して裏地の中起毛は無し。(つい原理主義的に仕様はなんでも再現したくなるのですが)
リブは、コットン糸で編んだもの。お久しぶりにリブ屋さんに行って、糸色を選び、試し編みをして「コットンでもしゃっきりして、伸びても戻る」いわゆる「キックバック」のある編みで。糸もコーマ(短繊維を落として、毛玉が出来づらい)かつ、双糸。要するに、高級な糸使ってなるべく長く、綺麗な状態 を保つように。袖口に、輪編み、縦に継ぎが無い物を使っているのもポイント。これが高い!専用機で編むから。量も必要だし。でも、L-2Bを人生で次作るかわからないのでこだわりました。
ファスナー、オリジナルはCrownですが、さすがにこれは入手出来ず。WALDESで、引手の形状はコンマー風の物を。
パターン、上記とは違うMサイズの個体をばらしてとり、着丈だけは少し伸ばしました。袖の長さも長すぎず。長い方が、カバー率は上がるのですが袖口リブが完全に見えなくなってしまうバランスは好きではないので。ご購入の際は寸法表・弊社モデルの着用写真からご検討ください。
参考にしたオリジナルはトップスアパレルとブルーアンカーオーバーオール製。表地・裏地の色はトップスアパレル。本来ついているはずのオキシジェンタ ブ、トップスアパレルはなぜかついていない。ついていた跡すら見えません。「これはこれですっきりしてよいな」と思い、WORKERS バージョンもオキシジェンタブは無しにしました。
ぱっと見、ただのL-2B。でも違うのが首のリブ。コットン100、北陸のリブ屋さんで編んでもらっています。
リブ、既製品もあるのですが(KODAKAリブ、アパレルの方にはおなじみですね)、今回の場合、袖口がどうやっても別注で編むことになります。あの袖口に使っている、縦にハギ目・切れ目のないリブは作らないとまずないのです。「まずない」というのが、昔はあったのです。微妙に緩かったですが、児島の唐琴で在庫しているスポーツ系?の資材屋さんがあったので。
以上余談で、基本的に袖口リブが編まないと無い。そして、その色に合わせないといけないので、襟・袖口も別注で編んでいるわけです。それも、袖口は輪編み・襟/裾は平らな横編み。同じようなリブでも、作る機械が違うので、あっちで作ったり、こっちで作ったり。
フロントファスナーは朝日ファスナーでコンマー「風」。あくまで「風」ですが、このファスナーは品質も良くアウターのフロントに使ってもストレスを感じないので選びました。
使う人はもう居ないでしょうが、シガレットポケット&ペン差し。ここもフロントと同じくファスナー開き。こういうのがあるから、工賃が上がる、部品代が上がる、結果値段が高くなるのですが、L-2Bでシガレットポケット無くしちゃうと何が何やらわからなくなるので、ここは残します。
袖丈を長くなりすぎないようにしています。袖口のリブに注目。ちゃんと、リブが見えています。袖が長いと、リブが袖で隠れてしまっている事ありますよね?あれがどうにも苦手なので、今回は袖を長くなりすぎないように設定しています。
これが何回も言っている「輪編みのリブ」。靴下を編むような、小さい径の丸編み機で編みます。編みます!と偉そうに言ってますが、見た事ありません。ありませんが想像つくのは、ほぼ同じ機械でニットタイも編んでいるからです。
これがニットタイを編む小寸の丸編み機。これが小寸ということは・・・
こちらはTシャツ生地を編んでいる口径の大きい丸編み機。同じ丸編みでも、出来上がる生地・製品に合わせて大きさが色々存在します。
裾の三角タブ。これも取っちゃおうかなと思いましたが、全部取るとL-2Bというよりナイロンのただのジャンバーだよねと知人から指摘を受けたので残しました。
2020年に気にする人も少なそうですが、エンドボックスもそれ「風」にしています。
裏地、オリジナルはウールレーヨンのところをコットンレーヨンに変更。これも、基布(ベースになる白い布)はあったのですが色が無い。そこで、Tops Apparelの個体を参考に染めてもらいました。レーヨンが織り込まれているので滑りが良い。そして、ウールが無いのでチクっと感が皆無!だからTシャツの上にも着られます。
後ろ中心には襟吊。初期型L-2Bがモデルだから黒タグつけようかなとも思ったのですが、かえってない方がシンプルかと思いなおしネームはポケット内プリントタグで後期型風に。こういうあたり、どこまで行っても「レプリカの呪縛」なのです。エヴァの呪縛で14歳のままのシンジ君やアスカのように、我々も「レプリカの呪縛」で永遠の20歳なのです。
超見せ場!と縫ってくれる藤枝先生にお願いしたポケット。最初見た時は、私も「なんだい、ただの玉縁ポケットじゃん」と思いましたが、実物をばらしてみるととっても独特な作り。いわゆる現代式の、玉縁ミシンを使って縫うのとは違う、俗に「手玉」とも我々が呼ぶ手間がかかる方法。
その現代式ミシンを使って、これ「風」にも作れたのですが、人生で二度とL-2Bを作るかわからないので「高くなってもこれで行って!!!」とお願いしました。工賃見て、目の玉落ちそうでしたが、仕方がないです。「だったら、お前が縫え」と言われば、私にはできないですから。
そうまでして機能性はどうなのか?といえば、特に機械玉縁と変わりありません。が、フラップに合わせてきれいに口が開いているのはやっぱり、手玉だからです。
サイズネームはポケットの中に。
肩のダーツ&見えづらいですがエポレット。
この肩ダーツのおかげで独特の丸みがあるのがいわゆる「フライトジャケット」と称されるL-2BやMA-1のポイント。
機能的には、肩甲骨周りの丸みを出し人間の体の自然な丸みにフィットさせるためでしょう。ただ、サイズ感がそこまでタイトな服でも無いので、あってもなくてもという世界ではありませんが、でも無いとフライト「らしさ」が無くなってしまう。絶妙な匙加減だと思います。
参考見本その1・TOPS APPAREL MFG Co., INC 7448B
参考見本その2・BLUE ANCHOR OVERALL CO., INC 7448A
やっぱりオリジナルにはオリジナルのかっこよさがあります。実際、これを着て「ふわっとかるく、突っ張らない」感じにあこがれて今回のL-2B Modも作り出しました。
全体に、色はグリーン系。ただ、パッチがついていた下を見るともっとシルバー系の色をしています。
どちらに合わせるか悩みましたが、染色屋さんが「パッチ下のほうが常識的に考えて当初の色はとどめているだろう」ということでそちらの案を取りました。
60年以上経っているにしてはかなり「そのまま」の状態。リブなんか、色もほぼばっちり合ってます。もしかすると、コントラクトが違うだけで部品は同じ仕入れだったのかな?とも思いますが、それにしてもロットブレが少ない。大量に作って備蓄?それとも、当時の超絶技術?現代でも、ロットが違えば糸にしろ、生地染にしろ色はぶれるので、この合い具合は素晴らしい。
一方で裏地は混率からして違う。色調も全く違う。それぞれ、MIL-J-7448のAとBで違いがあるので、このあたりはスペックに定義があったのか、幅があったのかはわからない部分です。
ステッチ色も実は全然違います。今回、WORKERSでは生地にあった色調のTops Apparel風にしています。良く見れば、ピッチも違う。同じようで同じでない。
ただ「コントラクト」がその会社というだけで、実際作ってるのは実は同じ工場?なんてことも他の製品ではあったのかな、などと妄想は続きます。
三角タブの形状が違う。ステッチの入れ方も違う。金属まわりの変色もあったりなかったり。このあたりは、保管の状況なのか、はたまたこのコントラクト特有の特徴なのか。 同コントラクトで複数の個体を調べないと結論は出ません。
このように、フライト系はどうモデルのコントラクト違い、A/Bと、同番号でも最後につく英字が変わり改訂があるのでそれが個体のディテールにどう違いを出しているのかを調べだすと本当に楽しい。残念ながら、私がこういう事に興味を持ちだした頃にはおいそれと、オリジナルは買える値段ではありませんでした。なので、それをレプリカ・リプロを見ながら知ったのも楽しかった思い出です。若干、眉唾な部分もありましたが。
MADE IN JAPAN
素材
表地:66ナイロンツイル・ナイロン100%
裏地:コットン58%/レーヨン42%/ツイル
リブ:コーマコットン100%/30番双糸
附属 革引手付きファスナー
縫製 総スパン糸
M 肩幅47cm 身幅57.0cm 着丈65.0cm 袖丈63.0cm
L 肩幅49cm 身幅61.0cm 着丈66.0cm 袖丈63.0cm
Workers K&T H MFG Co.
岡山を拠点にし、主にアメリカ物ワークアイテムを紹介しているブランドです。
実際のアイテムを調べる事はもちろん、そのアイテムを作っていたメーカーや現存する建物にまで足を運び歴史を調べ上げてアイテムづくりのヒントにしています。
生地やパーツにこだわり抜いた商品ながら非常にコストパフォーマンスの高いアイテムが特徴です。