Workers K&T H MFG Co "Bal Collar Coat, Grey Herringbone"
作り続けて早数年。パターンが練れたバルカラーコート(ステンカラーコート)
ジャケットの上、厚手カーディガンの上、はたまたスウェットパーカーの上。おおよそ、何の上にも着られるゆったりシ ルエット。
玄関のコート掛けから手に取っていつでも着られる軽さ。その「軽さ」が大事なのです。
ヘリンボンツイード。 スカスカではありませんが、どっしりまではいかない。東京以南の緯度ならジャケット代わりにも着られる重さがWORKERSのツイードコー トです。
一枚袖がレアだ!古い!とか古着業界では言われているようですが、 型紙を作る視点から見ると一枚袖は肩傾斜がつけづらい。セットインスリーブを展開してラグランにすると「スプリットラグラン」と呼ばれる、袖がサイドネックで割れた形になる。その割れを無くして、一枚のラグラン袖にすると、肩傾斜はゆとりとして処理をせざるを得ない。そのゆとり が「一枚袖」の持つ独特のシルエット・雰囲気、そしてアウターとしてジャケットの上に着るゆとりになっているのだと 思います。
Bal Collar Coat。
襟、簡単そうに見えて展開が難しく、私だけではどうしても皺が消え切らないので、半分解展でおなじみ、長谷川君に量産生地での縫い試験含めて依頼しました。
当然、下にある厚手のツイードはまた別型で、こちらは私と、量産工場で現物を縫い・修正・縫いを繰り返し、綺麗に収まるよう修正しました。
コットンギャバ、ベンタイルともに生地が超高密度。いわゆる「寸法が動かない」生地です。アイロンで伸ばしたりの自由が効かない。襟の難しさは表と裏で寸法に差が出る事。当然、表襟は裏襟を乗り越えるので大きくなる。また、ステンカラーの襟は、三日月上の台襟部分(ここは首に沿う)と、ブーメラン状の羽襟(ここは返り線から先で、身頃に落ち着いてなじむ)と、相反する形をつなぎ合わせることで、首に沿う vs 身頃に沿うという、違う方向に生地を形づくります。これらの、寸法・形状が、素材や首回りのパターンに合わせて変えないといけないのが苦心したところでした。
色々な実物を見てみると、いわゆる「現行コート専業工場」のそれはある意味綺麗すぎるぐらい綺麗。一方で、ビンテージのバーバリーを見ると、それなりに綺麗にできていますが、まったく、皺ひとつない!という現行品とは違う、どこかユルい仕上がり。私が作るなら・・・当然後者を目指すし、後者しか出来ないというのもあります。前者の「現行コート専業工場」に仕事お願いしてみようかな?と考えたこともあるのですが、あれだと「現行のあれ」にWORKERSのネームがついてるだけになってしまう。
そうではなくて、ビンテージのあの、良くできてるんだけどどこか現行品と違う雰囲気。あれを再現したくて始めたのがWORKERSなので、今回も、試行錯誤は必要でしたが、ご近所の工場さんとああでもない、こっちのほうがいいかと、パターンを変え、芯を変え、トライした襟なのです。
ツイードは裏地に無地のコットンツイル。厚すぎず、薄すぎず。今年のMoonglow Jacketを作るときに検討した
「以前裏地に使っていたシャツ生地よりは厚く」「Boardwalk jacketで使った厚手の綾織りよりは薄く」と、間を取って。かつ、糸も短繊維を落としたコーマ糸で毛羽が出来づらく、滑りが良いバーバリー生地(綾織り)。
ポケットは貫通。貫通した先にポケットもあるので物も入る。コートの前を閉じた状態で、ズボンのポケットに触れるための貫通ポケット。
フロントのヒヨク、ボタンホールの間は比翼止め。これもBaker Pantsのフロント同じく、表には貫通しない。
袖口、タブはサイズ調節というよりはデザイン。実際にサイズ調節に使うとちょっと不格好です。
袖口をしゃっきりさせるため毛芯を入れています。
当初、その毛芯は縫い代で止めていました。ただ、選択試験をしてみると、細長い芯なので止まってない部分がクシャっと丸まってしまう。そこで参考にしたオリジナルを見ると・・・「おう、接着芯やないか・・・」。時代によるのでしょうが、私が見たバーバリーは思いっきり接着芯でした。
接着芯ももちろん、悪くはないです。今回の襟には少しでもストレッチ性が欲しい部分があったので一部使っています。でも、袖口は身頃と同じく、毛芯で適度な固さ、でも弾力性がある仕上がりにしたい。考えに考え、たかがこの隠しステッチが思い浮かぶまで何夜、寝入るまで考えたか。
不思議な物で、こういう部分のアイデアは寝る前にベットの中で目をつぶって、私が寝るまで横に入れてくれるあぶちゃん(キジトラ)を撫でてると思い浮かぶのです。そんなこんなで気づいた、隠しステッチ。これで、クリーニングしても芯は丸まらない!
ボタンは樹脂ボタン。水牛にしようかとも思いましたが、参考にしたオリジナルも樹脂。おそらく、強度を重視したのだろうなということでWORKERSも樹脂を選びました。
国産のウール、ちょっとだけカシミアツイード。全体で見れば、ダークブラウンですがアップで見ると様々な色がまじりあっているのがわかります。これが、いわゆる「ウールトップ」と呼ばれる、糸・生地の特徴。ケースバイケースですが、ウールはなぜか糸になる前のワタ(ウールでもワタと言います)の状態で染めることが多い。それから糸にする。このワタの状態で染めるのを「TOP染・トップ染」と言います。だから、こういう色々な色が混じった生地を通称して「トップ」などと呼びます。
フロントボタンの裏は力ボタンつき。手つけで強度重視。
後ろ中心にベント。かなりゆったり作ったコートなので、ベントが開くことは中々無いのですが、半ばデザイン的に。
MADE IN JAPAN
素材
表地:480g/m 9.3オンス・ウール100%(内5%カシミア) ヘリンボンツイード
裏地:コットン100%・コーマバーバリーツイル
袖裏:キュプラ100%
附属 ユリア樹脂ボタン
縫製 スパン糸
38 身幅58.0cm 着丈97.0cm 裄丈86.0cm
Workers K&T H MFG Co.
岡山を拠点にし、主にアメリカ物ワークアイテムを紹介しているブランドです。
実際のアイテムを調べる事はもちろん、そのアイテムを作っていたメーカーや現存する建物にまで足を運び歴史を調べ上げてアイテムづくりのヒントにしています。
生地やパーツにこだわり抜いた商品ながら非常にコストパフォーマンスの高いアイテムが特徴です。