Workers K&T H MFG Co "Officer Trousers, Vintage, Type 2, 10oz Black Denim"
おなじみ、古今様々なチノパンを混ぜて作った Workers Officer Trousers。
Vintage Fit は「6-254」というスペックがついたミリタリーチノをそのままトレースしたパターン。裾幅 24 センチ、ま た上もかなり深い。
素材はブラックデニム。ブラックデニムが徐々に色落ちして「グレー系のトラウザーズ」になるのを期待して。コーディネートもシャツ・ジャケットに合わせて。本来ならウールのグレー系トラウザーズなのでしょうが、そこをあえてワークウェア的な素材で。
仕様は脇・内股とも巻縫い。今回お願いしている工場さんは巻縫いが得意。Slim、Vintage、縫製仕様は違いますがどちらも仕上がりの風合いはカジュアル。ミリタリーのオリジナルも様々な工場で作ったであろうことが 一目でわかります。トラウザーズ工場では綺麗、まっすぐ、ねじれの無い仕上がり。それに対し、ワークウェア系の工場 はラフで捻じれがある。一番はミシンの特性によるもの。そのどちらでも作れるよう、オリジナルは「1 本針ミシンでの 作り方」「2 本針巻縫いミシンでの作り方」といったように複数の製造法が明記してあります。
製品はOW済です。
ビンテージのチノパン、USA Specification 6-254とラベルに印字のあるデッドストックからパターンを起こしました。 深いまた上、太いワタリ・裾。何も変えずにビンテージそのままのシルエット・型紙にしました。 これが今見ると新鮮に見えてきます。
右前のコインポケット。正直機能性は微妙。でも「チノパンと言えば」でつけています。
脇が巻縫いのチノパンで一番難しい部分。前高の巻縫い。ここが後ろ高だとものすごい楽です。現代の脇巻きチノパンを見るとほぼ後ろ高。それをなぜかビンテージは前高。
前高が難しいのは「身頃+袋布+向こう布+見返し」と4枚のパーツが重なった物を折って巻いていかないといけないから。巻縫いの特徴で、「高」と呼ばれる右手で送り出して行く方が厚みがあると難しいと私は縫っていて感じました。もし逆に、後ろ身頃側を上にするとそちらは何もない一枚の布。巻縫いの下側は当然、厚みのある前身頃になりますが、下側は何とかラッパ(金具)に入っていきやすいのです。
WORKERSの商品解説でよく「ラッパ」と呼んでいる金具。前立てを縫う金具も「ラッパ」と呼びますが、まったく別の形をしているので紛らわしいのですが、巻縫いの「ラッパ」はこんな形です。これは、国産のラッパでブラザーの巻縫いにつけていたもの。ユニオンスペシャルや、それをほぼコピーしているJUKIの巻縫いにつくラッパは似た形ですが微妙に違います。
この互い違いに巻き込んでいく部分に、右手で上になるほう、左手で下になるほうを送り込みます。これが簡単そうで難しい。一枚の布同士ならば比較的簡単ですが、例えばジーンズの尻ぐりなら途中にヨーク部分がある。チノパンの内股なら股下交差部分が厚みがある。そういう所を綺麗に乗り越えるのが難しいのです。
さらに一点、数センチの厚みを乗り越えるのも難しいのにチノパンの脇は「ある部分はちょい厚、ある部分はかなり厚い、そしてまたちょい厚になり、のち一枚に」といったように、厚みが一定しない。やってみればわかります。本当にこの部分が難渋します。
カンドメより下は仮止めステッチがダブルステッチの上に乗っています。ここをきっちり止めておかないと巻縫いしたときに捲れたりします。
フロントボタンフライ。Slimよりまた上が深いのでボタン個数が多い。ボタン形状もSlimと違う、碁石のような形。
比翼止めステッチ。クラシックなトラウザーズの名残。
うまい!!!前の小股と呼ばれる左右身頃縫い合わせと、後ろ中心の巻縫いの合わせ。原理原則で言うと、巻縫いのど真ん中に小股の地縫いが来るのですが、このあたりはどうしてもズレます。というか、これを縫った人は小股のステッチと巻縫いを合わせたかったのか、「合っちゃった」のか。
Vintage、バックスタイルはやはり参考にしたオリジナルに忠実に。細玉でボタン無し。
後ろ中心ベルトループはオフセット。厚み軽減。
脇の巻縫い。裏から見るとダブルでチェーンステッチが走る。ここの三巻も中々泣かせる部分で巻縫いで4枚。それが3つ折りで12枚。そのすぐ横は生地1枚×3で3枚。ものすごい厚みの差がある部分を裾縫いしています。
若かりし頃、祖母にもらった工業用ミシンで縫ってもどうしてもここが目飛びする。抑え金の圧力を上げたり、最終手段で抑え金を指で押さえつけながら縫ってもダメ。指で押さえつけるのはやってはダメです、下手すると指縫うので。
その後、岡山に来てから厚物用ミシンを買ったらまぁ縫える。でも「まぁまぁ」なので、もっときれいにと思って、通常の下送りだけじゃなく針送りのミシンを追加で買ったり。サンプル縫うにも試行錯誤していました。その試行錯誤が当時働いていた工場でも役に立ちましたし、周りの工場の人から認めてもらえるきっかけになりました。やっぱり、工場の人は縫うプロです。お願いしたり、説明したりするのに、自分で工場の人のように上手くは縫えなくても原理がわかって、どこが苦労するかわかっている。それがわかっていれば「ここをもう少しこうしてほしい、難しいのはわかるんだけど」とか「こういう工夫したらどう?」とか提案しても聞いてくれるのです。
素材 10.5オンス・コットン100%・チノクロス
附属 樹脂ボタン
縫製 主要部綿糸・一部強度の必要な部分地縫いにスパン糸
MADE IN JAPAN
30 ウエスト77.0cm 股上(前31.5cm,後41.6cm) レングス78.0cm ワタリ幅35.0cm スソ幅23.5cm
32 ウエスト82.0cm 股上(前32.0cm,後42.0cm) レングス78.0cm ワタリ幅36.0cm スソ幅24.0cm
34 ウエスト87.0cm 股上(前32.6cm,後42.7cm) レングス78.0cm ワタリ幅37.5cm スソ幅24.5cm
Workers K&T H MFG Co.
岡山を拠点にし、主にアメリカ物ワークアイテムを紹介しているブランドです。
実際のアイテムを調べる事はもちろん、そのアイテムを作っていたメーカーや現存する建物にまで足を運び歴史を調べ上げてアイテムづくりのヒントにしています。
生地やパーツにこだわり抜いた商品ながら非常にコストパフォーマンスの高いアイテムが特徴です。