Workers K&T H MFG Co "Moonglow Jacket, Grey Herringbone Tweed"
二つボタン、ベント無し、チェンジポケットあり。胸の箱ポケットはカーブ。フロントのカッタウェイも少し強い。 Maple Leaf Jacket より、もう少しクラシックなイメージを目指しているのがMoonglow Jacketです。
大きなパターンの変更が一点。袖の前ぶり、ひねりを弱くしました。Lounge Jacket と同じ変更点ですが、今回はMoonglow Jacket が一番大きく変更しています。
素材、グレー・ブラウンのウールヘリンボンを作りました。糸はウール100%で、 内5%はカシミア。ブラウンの色調にこだわりがあり糸を探しているうちにこのウール・カシミア糸を見つけました。特別カシミアに固執は無かったのですが、出来上がった結果、やっぱり通常のウール100 とは違う。少し柔らかく、でも打ち込み本数はしっかり多く、仕上げでかなり縮絨もかけているので生地上がりはゆるく無い。我ながら、良い生地に成ったと思います。
とても地味ですが、自分なりに試行錯誤したのが身頃の裏地。コットン100 のツイル(綾織り)生地。今回のクラシックな雰囲気に合わせて無地にしたい。コットン100で滑りが良く。かといって、重すぎず軽すぎる。ということで、以前のストライプシャツ生地よりは重い、でも昨年Boardwalk Jacket で使った無地よりは軽い。糸も短繊維を落としたコーマ糸で毛羽が出来づらく、滑 りが良いバーバリー(綾織り)。身頃もキュプラにしてしまえば、滑りはとても良くなりますがそれでは現代のジャケッ トと同じに成ってしまう。裏地一つも意外と色々考えて選んでいるのです。
久しぶりに登場のMoonglow Jacket。二つボタン、センターベント無し、胸の箱ポケが湾曲。イメージは、Maple Leaf Jacketの60年代アメトラよりもう少し古い年代のジャケット。
ボタンの位置がポイントで、ちょうどみぞおちの辺り。本来、人間のウェスト(へそのあたり)より上にしています。みぞおちあたりは体を動かしても寸法変化がしづらい。また、ここのボタンをしめて、そこから下をしめないと、腹の一番太い部分はゆとりが残ります。つまり、上ひとつがけすると、すっきりして見えるけれど体を動かしたときは必要なゆとりが生まれる、という事です。
全身で見ると、すっきり見えるのがよりわかりやすくなります。上はGrey、下はDark Barown。どちらもウールのヘリンボンツイード。コーディネートはジャケット以外同じですが、グレーの方が都会らしく。ダークブラウンの方がより、カントリー、でも明るすぎないのでどこか都会的な雰囲気も残り。甲乙つけがたい色です。
襟裏の芯止めステッチ。芯を止めるジグザグステッチと、襟腰を固くするための並行ステッチ。
寒い時は襟を立てて着ることもできるよう、トップボタンあり。フラワーホールも実際、飾りではなく穴が開いています。(さすがに、小さな花瓶をつるループはつけていませんが)
胸ポケット。角にアールを付けた箱ポケット。単純に四角に折る方が簡単なのですが、この曲線がアール・ヌーヴォー風の、流麗な雰囲気を出す。(と信じています)
やりすぎると、コスプレっぽくなるので、襟先やラペル先は丸みを出し過ぎていません。
フロントのカーブ。毎回、ジャケットの型紙をひくときに悩む部分です。
カッタウェイが強すぎるとクラシックすぎる。かといって、四角の角を落としたようだと、あまりに戦後の60年代感が過ぎる。
今回のMoonglow Jacketの場合、クラシック寄りなのでカッタウェイはある程度あり、でもここも「コスプレ」にならないように。
前・脇・後ろと3面体。その縫い目を一部横断するようにフラップポケット。フラップの形状も若干ひし形にして流麗さを出し、ポケット裏には身頃裏地を使って薄く仕上げる。
ボタンはクロス付け。そのボタンのすぐ横、一度ステッチをとめて、ボタンより上はラペル側表目。ボタンより下は身頃表目で縫っています。
ジャケットならば当たり前の仕様。前端のステッチを行くときに、返り線より上はラペル側(見返し側)が縫い目の表目。そこから下は身頃側が縫い目の表目になるように、一回ステッチを切っています。 本格的なテーラードジャケットであれば当たり前の仕様です。でも、カジュアルジャケットだとついつい省略されていたりする仕様なのです。
表目が綺麗、裏目が汚いという、見た目だけの問題もありますが、それ以上に前端がはねる(外方向にカールする)のも防いでくれます。 ステッチは、どんなに上糸・下糸のバランスをとっても若干、下糸側に巻き込むというか、カールするというか。その特性を利用して、ラペルはラペル側から、前端裾に向かっては表から縫うことで、それぞれ布の向く方向を変えています。(うーん、説明が難しい)気になる方は展示会のときに直接聞いてください。
WORKERSでは、Lounge Jacketでも同じように始末しています。カジュアルジャケットだけど、ジャケットとして最低限抑えなければいけない部分は抑える。それが、WORKERSのカジュアルジャケットを特別なものにしてくれている・・・(と信じています)
身頃の裏地はコットン無地。細かい事を言うと、今年の裏地も以前と変えています。
以前のシャツ生地は、つるっとして薄く、裏地としては使い勝手が良い物でした。Boardwalk Jacketでも使った厚手の無地物は、がっしり。あれはあれで、Boardwalk Jacketのようなカジュアルには向きますが、今回のMoonglow Jacketはもう少しドレッシーに。でも、全面キュプラにはしたくない。
そこで、ストライプシャツ生地と、厚手の無地の間になる目付/厚みのコットン生地を探し使っています。
裏付きは、裏地をどの程度の重さ・厚み・固さにするかで、かなり全体の雰囲気が変わってきます。
袖口はあえて開きなし。この仕様なら、袖丈直しに出しても、簡単に袖口で直せて費用も抑えられます。
あくまで「カジュアルなジャケット」なので、本切羽、体に完全にフィットしたパターン。そういう事であれば、オーダーした方が良いです。「既製服のカジュアルジャケット」として、「ジャケットらしさに外せない部分」を押さえてかつ、買いやすい価格で作るのが、WORKERSが作るべきジャケットだと思います。
素材
表地:480g/m 9.3オンス・ウール100%(内5%カシミア) ヘリンボンツイード
裏地:コットン100%・コーマバーバリーツイル
袖裏:キュプラ100%
附属 樹脂ボタン
縫製 総綿糸
38 肩幅45.0cm 身幅54.0cm 着丈71.0cm 袖丈61.0cm
40 肩幅47.0cm 身幅58.0cm 着丈73.0cm 袖丈61.0cm
Workers K&T H MFG Co.
岡山を拠点にし、主にアメリカ物ワークアイテムを紹介しているブランドです。
実際のアイテムを調べる事はもちろん、そのアイテムを作っていたメーカーや現存する建物にまで足を運び歴史を調べ上げてアイテムづくりのヒントにしています。
生地やパーツにこだわり抜いた商品ながら非常にコストパフォーマンスの高いアイテムが特徴です。